部員さがし

「新入生さん、来てくれるんでしょうか……」
 誰もいない生徒会室(別名ミステリー部部室)で、野田大介は頭を抱えて呟いた。
 新学期が始まってからすでに数ヶ月たっているが、1年生の部員はゼロ。まともに活動していないのでうまく宣伝することも出来ない。副部長である美月が無理やり入部させた美しい転校生を眺めているだけで十分幸せだし、そんな時間を邪魔されたくないので別に部員が増えなくたって構わないのだが、来年、再来年のことを考えるとやっぱり1年生の部員はいた方がいい。
 それに、早いうちに1年生の部員を確保しないと顧問からの罰ゲームが終わらない。
「あああ……タツキさんに会いたい……」
 パタパタと廊下をかける足音が聞こえ、大介は顔を上げた。生徒会室のドアが開き、美月が顔を出す。
「美月さん……あの、タツキさんは?」
「えへへ、ごめんね大介君。まー君に先越されちゃった」
 美月がきまり悪そうにぺろりと舌を出した。大介がため息をつく。
「そうですか……」
「でも大丈夫だよっ、私ね、1人だけこの部に入ってくれそうな1年生知ってるよ!」
「だ、誰ですかっ!」
 大介は顔を真っ赤にして美月に詰め寄った。
「落ち着いてよ大介君。ほら、タツキちゃんのお友達だよー。見たことあるでしょ?」
「……あの方ですか」
 彼女とやけに親しい1年生。確かに、彼なら活動内容の説明をしなくても入ってくれそうだ。
「ね、早く会いに行こっ。あの子帰っちゃうよ」

 帰ろうと靴箱で靴を履き替えていると、誰かが叫んでいるのに気がついた。
「おーい、タツキちゃんのお友達の子〜」
 多分、朝野さんだ。まだ俺の名前を覚えていないようだ。
「あ、いたいた。大介君、この子だよ」
 朝野さんが男子生徒の手を引っ張りながら俺のそばまで走ってきた。
「ね、何か部活に入ってるの?」
「いや……何も」
「ほら、部活入ってないって言ってるよ大介君」
 嬉しそうに朝野さんが俺の顔を覗きこむ。なぜか恥ずかしい。
「ねーねー、ミステリー部に入らない?」
「……ミステリー部?」
 あまり聞いたことが無いし何をするのかもわからない怪しい部活だ。朝野さんも後ろにいる「大介君」もその怪しい部活の部員なのだろうか。
「ミステリー部って、どんな部なんですか?」
「えーっと、心霊写真撮りに行ったり七不思議の謎を解いたりするんだけど……」
「俺あんまりそういうのに興味ないんで……」
「わ、私だって無いよっ!」
「な、何言ってるんですか美月さん!」
 朝野さんの後ろで「大介君」が目を丸くした。
「だって興味ないんだもん。まー君が楽しいよ、って言ってたけど夜に学校に来るの怖いじゃん」
「そういうことあまり大声で言わないでくださいよ……」
「とにかく、タツキちゃんも入部したんだからタツキちゃんのお友達も入ろっ! じゃないとタツキちゃんと遊べないんだもん……」
 何かワケがあるみたいだ。朝野さんといつも一緒にいるはずのタツキちゃんの姿も見えないし。
「あの……。何かあったんですか?」
 悲しそうな朝野さんの横顔に負けて声を掛けた俺の判断は、間違っていなかったのだろうか――。

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