成長日記!?

「武、今日はおじいちゃんと一緒に寝ような」
 小早川の隣に八木が布団を並べる。小早川は心の中で舌打ちをした。同じ布団で寝るよりはマシだがうっとうしい。
「あのさじいちゃん」
「何じゃい武」
「じいちゃんってさ、昔タツキちゃんの担任だったって聞いたんだけどさ、本当なの?」
「そうじゃよ。鬼頭君が武と同じくらいの歳にな。あの頃のワシはまだ若くていけめんで、鬼頭君にもよく懐かれてたよ」
「本当かよ、証拠とか写真とか、何かねーの」
 ちょっと待ってなさい、と小早川に告げ八木が押し入れを開ける。しばらく中をあさり、ホコリのついたアルバムを取り出してきた。
「これじゃこれじゃ」
 アルバムをめくり、八木が1枚の写真を指さした。クラスの集合写真だろう、その中にまだ若く髪の毛もフサフサな八木と今より幼いタツキの姿があった。
「ほれ、鬼頭君じゃろ」
 得意げに写真を見せつけ、八木は孫を見た。孫は驚いた表情で写真に見入っている。
「マジかよすげー」
 孫の反応に八木は気を良くした。普段からこれくらい自分の話に食いついてくれればいいのだが。
「なーなー、じーちゃん、タツキちゃんってやっぱり昔からああなの」
「昔から真面目でしっかり者だったのう。親御さんが仕事で留守がちだったから、1人で弟の面倒も見てたんじゃ。時々家に来たこともあるぞ。武だって、鬼頭君に抱っこしてもらったことがあるじゃろ」
「うそっ」
「確かこっちに……」
 八木が押し入れから別のアルバムを取り出した。『武・成長記録』と書かれたアルバムをめくり写真を見せる。
「おい何だよその気持ち悪いタイトル……あ!」
「これじゃ」
 確かに写っている。タツキが幼い小早川を抱きかかえている写真だ。
「武が2歳の頃じゃのぅ」
 2歳の小早川はタツキに抱きかかえられてニコニコしている。この頃からすでにタツキに懐いていたようだ。
「武も鬼頭君も可愛いじゃろう」
「確かに可愛いけどさ……なんかタツキちゃんエロくね?」
「そ、そうかのう」
 違和感はすぐに見つかった。普段から長いスカートを履いているタツキ。膝から上なんて滅多に見えない。なのに写真のタツキは小早川を抱えてスカートがめくれていた。細長くて傷ひとつない太ももが露わになっている。
「……じいちゃんさ、タツキちゃんの太もも、撮ってない?」
「ま、まさかそんなことを。ワシはただ武の成長をだな」
 目の前の祖父は明らかに動揺している。
「そういや前に野田っちが校長室の前で、タツキちゃんの生脚がどうのって言ってたな」
「ワ、ワシはやましいことなど何も」
「じゃ、この写真俺が貰ってもいいよな」
「それは……」
 八木は口ごもった。あくまでも可愛い孫の成長記録であってやましい気持ちはない。だが手放したくない。
「タツキちゃんに話しちゃおっかなー。じいちゃんのこと尊敬してるみたいだし、がっかりするだろうなー」
「そ、それだけは」
「にしてもエロいなこの写真。これなんてパンツ見えそうじゃん」
「これ武、鬼頭君を変な目で見るんじゃない」
「じじいに言われたくねーよ」
 返す言葉がない。八木が黙り込んだのをいいことに、小早川は古いアルバムと『武・成長記録』シリーズを没収した。

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