見回り
「僕に黙ってデートですか……許せませんね」
「いやどうみてもデートじゃねーだろ」
純とタツキの後をつけながら、大介は小早川を連れて歩いていた。
夏祭りの見回り。教師数人で夏祭りの会場周辺を見回る、とのことで、大介はこれまでにも他の女性教諭と一緒に見回りをするタツキの後を追い続けてきた。その女性教諭が異動し、今年こそはと誘うチャンスを窺っているうちにいつの間にかこんなことになってしまっていた。
「貴方もですが稲村先生も最近タツキさんに馴れ馴れしくしすぎじゃないですか……タツキさんには僕がいるというのに」
「別に付き合ってるわけじゃないんでしょー。それにタツキちゃん、純ちゃんの事気になってるみたいだぞ」
「な、何ですってぇ!?」
「うるせぇタツキちゃんに聞こえるだろうっ」
大介は慌てて口を押さえ先を歩く2人を見た。気付かれてはいないようだが、親しそうに並んで歩いている純が気に食わない。
「小早川さん、さっきの……本当なんですかっ」
「わかんないけどタツキちゃん、純ちゃんといると嬉しそうだし顔赤いんだもん」
「ううっ」
大介の前でタツキが嬉しそうに頬を染めたことなんて滅多にない。というかあっただろうか?
「一体いつの間にタツキさんをっ」
悔しくて純をにらみつけるが、純は大介の視線に気付くことなく呑気にタツキの隣を歩いている。
「あああうらやましい」
「落ち着けよー、別にデートじゃないんだからさ。つーかあの2人友達だし」
「友達……なんて危険な」
純が友達なら、彼はタツキにとって数少ない友達ということになる。友達が出来ればきっと、相談事や日常の会話も先輩の自分ではなく友達である彼に……。
泣き出しそうな大介の背後で、黄色い悲鳴が上がった。
「きゃあ野田先生、見回りに来てたんですかぁ」
「私も連れてってください〜、少なくとも小早川君よりはちゃんと見回りますから〜」
「えっあの、えっと」
女子生徒に囲まれる大介を見て、
「じゃー俺1人で見回り行ってきまーす」
あきれるように肩をすくめ小早川は2人を追った。大介のせいで見失ったがしばらく歩いているうちになんとか見つけることが出来た。近くにめぐみがいたような気がするがきっと気のせいだろう。しばらく後をつけてみたが、2人は見回りを終えたのか学校に帰るようだ。
「ようタツキちゃん」
尾行をやめ、小早川は後ろからタツキに抱きついた。
「ひょっとして純ちゃんとデートしてたの?」
「ち、違うよぉ」「見回りだ」
ほら野田っちの思い過ごしじゃん、と言いたくなったが小早川はこらえた。あとで本人に言ってやろう。
「あ、もう遅いから家まで送るよ」
「お、純ちゃん気が利くじゃん。タツキちゃんも一緒に送ってもらおうぜ、野田っちはまだ見回ってるからさ」
「じゃあ先輩に連絡だけでも」
野田っちの味方をすべきなんだろうけど別にいいか、俺たち友達だし。
そう思い小早川は純についていった。