教室で二人きり
「珍しいねぇ、美月ちゃんがお休みなんて。明日台風が来るんじゃないかなぁ」
放課後。美月の席に座り、雅也は教室中を見回していた。すぐ後ろの席では、タツキが教科書をカバンにしまっている。
「そんなに珍しいんですか」
「珍しいよー。去年は鼻水垂らしながら学校に来たくらいだからねー」
くるりと向きを変え、雅也はタツキをじっと見つめた。
「で、タツキちゃん。学校にはもう慣れたかい?」
小さく頷いたのを見て、雅也は目を細めた。
「お友達出来たもんね。それに大介君や僕みたいなカッコイイ彼氏もいるしね」
「誰が彼氏ですか」
タツキは顔をしかめた。
「僕はともかく、大介君ははたから見ればキミの立派な彼氏じゃないか。あんなストーカーじみた生徒会長、僕見たことないよ。キミのお母さんに伝えなきゃね、タツキちゃんに彼氏が出来たって」
「お母さん……」
連絡もよこさずに一体どこにいるのだろう?
「安心しなよ」
雅也の大きな手がタツキの頭を撫でた。
「ちゃんと戻ってくるって言ってたよ。今タツキちゃんの本当のお父さんを捜してるんだってさ」
「本当の……」
「うん。だからさ、楽しみに待っていれば良いと思うよ。さ、帰ろっか」