メールが届いた
目覚ましの音で、タツキは目を覚ました。
目をこすりながら台所に行ったが、やっぱり母親は帰ってきていない。
朝ご飯を作って食べて着替えをしていると、玄関のチャイムが鳴った。着替えを済ませて出てみると朝野が笑顔で抱きついてきた。
「タツキちゃんおはよー」
「おはよ……」
遠慮なく家へ上がりこむ美月。パタパタと足音を立てて一階を一回りした後。
「タツキちゃん……もしかして一人なの?」
大きな瞳でじっとタツキを見つめながら訊ねた。
「うん。一人」
「……じゃあ、今度お泊りしてもいい?」
別にいい、と適当に返事をしてタツキは玄関を出た。
「置いてくよ」
「あ、待ってー」
慌てて外に出た美月が、タツキに抱きついた。
「今度タツキちゃんの家に泊まるからね! 約束だよっ!」
部室では、お泊りお泊りと美月が騒ぎ、それを聞いた部長が青ざめていた。
「タツキさん……僕も一緒にお泊りしてもいいですか?」
「……嫌だ」
「何だい? 泊まりって。合宿の話かい? 珍しいねぇ、君たちがすすんで合宿の話をするなんて」
ニヤニヤとした笑みを浮かべ、雅也が部室に入ってきた。美月の隣に座り、携帯電話をいじっている。
「違うよまー君、私ね、タツキちゃんのお家に泊まるのー」
「いいねぇ、僕も泊まりたいなぁ。今年はタツキちゃんのお家で合宿しようかなぁ」
「やめてください」
「先生、携帯は使用禁止ですよ。校則にあったでしょう」
「そうだっけ? じゃあ皆内緒にしてて」
携帯をいじる手を止めない雅也。美月は身を乗り出して雅也の携帯を覗き込んだ。
「まー君、誰にメールしてるの?」
「胸当たってるよ美月ちゃん。えっとね、タツキちゃんのお母さん」
美月はタツキの方を見た。
「タツキちゃんの……お母さん?」
「うん。タツキちゃんを任せた、って言われちゃった。お父さん、って呼んでもいいよー」
「嫌だっ」