廊下で衝突

「タツキちゃん、一緒に帰ろう!」
 後ろから駆けてきた美月が腕を絡めてくる。すっかり懐かれてしまったようだ。
「仲が良すぎて羨ましいよ、キミ達」
「まー君さよーならー」
 タツキにくっついた状態で美月が雅也に手を振った。
「はいさよなら。また明日ね〜。宿題忘れちゃダメだよ〜」
「忘れないもんっ」
 しばらくの間美月は頬を膨らませていたが、
「ねぇタツキちゃん……宿題一緒にやってもいい?」
 そう言って上目遣いにタツキを見た。
「……うん」
「わーいありがとー! タツキちゃん大好き!!」
 タツキに向かって美月はニッコリと笑った。やっぱり美月には笑顔が似合うな、とぼんやり思っていると。
「あ、タツキちゃん!」
 美月がタツキの腕を引っぱったが少し遅かった。タツキは反対側から走ってきた男子生徒にぶつかってしまった。
「すみません!」
 倒れそうになったタツキを、相手がとっさに抱き寄せる。いつのまにか美月の手が離れていたようだ。おそらくぶつかった時の衝撃で手を離したのだろう。
「大丈夫ですか?」
 相手がタツキの顔を覗き込む。
「あ……」
 タツキを見つめたまま、相手は頬を赤く染めている。タツキはぼんやりと彼の栗色の髪を眺めた。知らない人だ。
「あ、大介君だー!」
 美月がタツキを抱き寄せたままじっとしている男子生徒に向かって叫んだ。
「美月さん、この方は?」
「朝野……この人知ってるの?」
 2人に尋ねられ、美月は笑顔で頷き答えた。 「うんっ。この人は大介君。ミステリー部の部長さんで、生徒会長さんだよ。この子はタツキちゃん。私のお友達だよっ!」
「タツキさん……」
 大介からタツキを引き離し、美月はタツキの手を握った。
「タツキちゃん、ミステリー部入ろっ! 大介君、いいよね?」
「もちろんです!」
 爽やかな笑みを浮かべ、大介は頷いた。
「えへへー、タツキちゃんとおんなじ部活ー」
 幸せそうに美月が笑う。

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