先生
「タツキちゃん、おはよっ! 一緒に学校行こっ」
ボーっと通学路を歩いていたタツキは、同じクラスの美月に後ろから抱きつかれた。美月の大きな胸がタツキの背に当たる。
「おはよ……」
目をこすりながらタツキは挨拶をした。
「えへへ、今日の給食楽しみー」
タツキの腕に自分の両腕を絡め、美月は楽しそうに笑う。タツキと違って朝から元気だ。
「給食?」
「うん、プリン大好きなのー。タツキちゃんは?」
「……カレー、かな……」
教室に入ると、担任と目が合った。分厚い眼鏡と金田一耕助のようなボサボサ頭が特徴の担任、青山雅也は二人を見るなり椅子から立ち上がった。
「二人ともおはよう!」
雅也がニヤニヤと笑みを浮かべ、両手を広げている。
「まー君おはよっ!」
タツキから離れ、美月は雅也に抱きついた。
「おはよ〜。美月ちゃんは可愛いなぁ。なんかいい匂いがするよ」
美月を抱きしめ、雅也は美月の顔に鼻を近づけた。
「…………変態」
「ん? タツキちゃん何か言ったかい?」
「いいえ何も言ってません」
そう、と呟き、雅也は美月の髪に鼻をうずめた。
「あぁ可愛いなぁ。家に連れて帰りたいくらい」
「先生それ犯罪」
「わかってるよー」
そう言ってしぶしぶと美月から手を放した。美月はまだニコニコと笑っている。お菓子を与えたら誰にでもついて行きそうだ。
「タツキちゃんも美人だよねー。触ってもいいかい?」
手を伸ばす雅也をかわし、タツキは「もっとまともな担任が良かったな」と思った。